ハーモニックス
ハーモニックス(フラジオレット,フラジョレット)
[ダニエル・ベルヌーイは、弦の振動は基本周波数とその整数倍の周波数の成分(倍音)の重ね合わせとして表せることを波動方程式から導き出し、後に数学者ジョゼフ・フーリエがフーリエ級数として体系的に理論化した。]
この意味するところは、一つの音には無数の整数倍の音が含まれていると言うことで、例えば「ド」と呼んでいる音には下図のような音が含まれています。

通常、音の高さと言っているのは、この元の音(1倍音、基音)のことで、他の音はひっくるめて「上音」と呼び、その混ざり具合が音色になります。
フラジオレット奏法とは、この基音を消して高い上音を生かす奏法です。

下図は振動を分解して1倍・2倍・3倍を別々に絵にしたものです。

絃に指を触れて振動を消します。絃の中央に2倍音の節があるので、そこに触れると基音(1倍音)は消え、2倍音が残ります。
1倍、3倍、5倍・・の奇数倍が消え、2倍、4倍、6倍・・の偶数倍の音が残る、即ち1オクターブ高い音になります。
周波数成分が変わるので音色も変ります。
同様に、3倍音は絃の3分の1のところに節があります。ここに触れると1倍音と2倍音が消え、3倍音が残ります。
即ち、3倍、6倍、9倍・・の音が残り、1オクターブ半高い音になります。
3倍音は左右2箇所に節がありますが、絃の長さを変える訳ではありませんからどちらでも同じです。
もし左右で高さが違ったら、それは強く押しすぎて長さを変えているからでしょう。

この奏法は操作が微妙で、先ずは位置が正確であること、そして触れ方は、絃に触れるのではなく、振動に触れることです。
絃を手前から向こう側に弾くと、初め水平方向の振動が上下になったり複雑に方向を変えます。
上の図は絃が上下に振れているところを上から指で触れるように描いてあります。
もし、絃が水平方向に振れていたら指で振動に触れることが出来ず、絃に触ってしまいます。
わずかな振動で指が弾かれる繊細な感覚が必要になります。

余談
倍音を使う奏法は箏では特殊な奏法ですが、管楽器ではオーバーブローと呼ばれて普通に使われています。
吹き方で2倍、3倍の音を出します。例えばトランペットのようなピストンが付いた楽器でも、ピストン操作なしに下のドから2倍音のド、3倍音のソまでは普通に使います。
4倍音のド、5倍音のミは苦しいですが出せる人もいるそうです。

2つの声を同時に出す「ホーミー」は、隠れている倍音を口の中で共鳴させて際立たせています。